地植えスペースが少なくても、実をつける野菜を育てたいと思うものです。ナスは、プランターでも育てやすい夏野菜です。プランター栽培が難しいと思われがちですが、適切なプランターを選定すれば、移動が容易だったり、土作りも比較的簡単と、メリットも多いのです。
ナスの花は見た目も魅力的で、うまく育てれば1株だけでも家庭菜園で楽しむくらいの収穫が見込めます。小さな苗から育った採りたてのナスは、その過程も含めて味もさらに絶品となります。
この記事では、プランターでのナス栽培について詳しくまとめています。プランターの選び方や土作りの事前準備から、実際のナスを育てる際の手順、そしてしま農研での実際の栽培レポートまでを解説しています。ナスをプランターで育てる際の参考にしてください。
ナスは、しま農研でも毎年必ず育てたい野菜の1つです。地植えスペースがない時はぜひプランター栽培に挑戦してみてください!
地植えのナス栽培については別の記事にて詳しく紹介していますので、そちらも併せてご参照ください。
1.ナスについて
ナスの原産地は高温多湿の東南アジアです。現在のインド東部辺りの樹林帯で、川や沢沿いのぽっかり開けた明るい場所原種が自生しています。
ナスは日当たりもよくて肥料をたくさん必要とする野菜です。水切れもしやすく風通しもなるべくよいいところに植えると生育もよくなります。少し環境にうるさいところはありますが、うまく育つとたくさん実をつけてくれます。
和名/英語 | ナス/egg plant |
原産地 | インド |
分類 | ナス科ナス属 |
発芽適温 | 25~30℃ |
生育適温 | 23~30℃ |
プランター | 深型 |
土壌酸度 | pH6~6.5 |
収穫まで | 約1ヶ月 |
2.ナスのプランター栽培方法
2.1 ナス栽培のプランターの大きさ
2.1.1 ナスを育てるプランターを選ぶ
ナスの根は深く横に広がるので、深型のプランターを用意することがおすすめです。あんどん仕立てで育てたい場合は、横型より丸型の方が育てやすいでしょう。
しま農研では、深さが30cm以上の10号以上のプランターを推奨しています。大きいプランターを選ぶだけでなく、植え付け後のお世話も重要です。
プランターの選び方やその際の注意点については、別の記事で詳しく解説しています。新しくプランターを購入する際には、ぜひ参照してください。
2.2 ナスのプランター栽培計画と準備
ナスの理想的な生育温度は23~30℃であり、そのため5月初旬頃の定植が最適です。しま農研ではゴールデンウィークを活用して夏野菜の定植作業を実施しています。順調に育てば、6月後半頃には収穫がはじまり、9月頃まで定期的に収穫することができます。
初心者の方には、手間を省くためにも種からの育苗より、苗の購入をおすすめします。園芸店では様々な種類のナスが並んでいるので、お気に入りのナスを選んで育てましょう。
2.2.1 ナスのプランター栽培カレンダー
しま農研でのナス栽培経験を基に、月別の具体的な作業と成長の様子をカレンダー形式でまとめました。このカレンダーを参照することで、ナスの成長の進行や、それに伴うケアのタイミングを具体的にイメージすることができます。
栽培を始める前に、このカレンダーを用いて予習することは、成功への第一歩となります。なお、このカレンダーに記載されているデータはしま農研での実際の結果をもとにしています。あなたの環境や条件下での栽培時には参考程度にご利用ください。
2.2.2 ナスの品種を選ぶ
現在、様々なナス品種が存在しています。今回は、しま農研で実際に育てた経験のある品種をいくつか紹介しますが、他にも魅力的な品種が多数ありますので、園芸店での探索もおすすめします。
千両二号
中長ナスの代表的な品種として知られる千両二号。
調理の際の用途が多岐にわたり、使い勝手が非常に良いです。改良された育てやすい品種なので、初心者にもおすすめです。
とろ〜り旨なす
家庭菜園においては白ナスの「とろ〜り旨なす」が特におすすめです。白ナスは、加熱すると普通のナスよりも柔らかくなる特性があり、その食感と風味をぜひ味わっていただきたい。
また、その独特の色合いも魅力的で、視覚的にも楽しむことができます。
紫の極
「カネコ種苗」から登場した加茂ナスの一品種、紫の極。
この品種は栽培が少し難しいと言われていますが、その可愛らしい丸い実や独特の味わいが魅力となっています。
2.2.3 ナスの苗の選び方
良質な苗を選ぶことは、その後の生育や収穫において非常に重要です。適切な苗を選ぶことで、栽培がスムーズに進み、病害虫のリスクを低減できるでしょう。
特に、ナスには「接ぎ木苗」という種類が市場に多く出回っています。接ぎ木苗は、異なる2つの植物を組み合わせて作られ、一般的に環境の変化や病害虫に対して強いとされています。このため、初心者の方にとっては特におすすめの選択となります。
選び方のポイント | 詳細説明 |
本葉の枚数 | ナスの苗は、本葉が7~9枚のものが最適 |
一番花の存在 | 一番花が咲いているか蕾があるものがベスト |
本葉の健康状態 | 大きく元気で、病気や害虫被害がない苗 |
茎の太さと節間の長さ | 節間が長い徒長気味の苗はさける。茎が太く節間の短い苗を選ぶ |
接ぎ木苗 | 初心者におすすめ。連作障害に強い |
2.2.4 ナスのプランター栽培の土づくり
プランターで使用する土は、2年目以降も適切な手入れを行えば再利用が可能です。プランター栽培を初めて行う方は、園芸店で取り扱っている野菜用の土を購入するのがおすすめです。
具体的な土の処理としては、土からの古い根を取り除いた後、土の再生材を混ぜ込んで使用します。さらに、太陽熱消毒を行うことで、土の状態をより良くすることができます。具体的な手順や詳細については、別の記事で詳しく解説しています。
2.3 ナスの定植【プランター】
ナスの苗を定植するときのは、根が活着することを意識することが大切です。各工程で水をこまめにあたえてあげると根の活着がよくなります。
2.3.1.苗のポットに水をあたえる
植え付け前の1,2時間前に水をあたえて、根に水を吸わすと活着がよくなります。
この際に液体肥料を希釈してあたえるとより活着します。
2.3.2 苗を植え付ける穴を空けて水をいれる
穴を空けて一度ポットをいれてみて深さを試します。ナスは浅植えにすると根が傷んでしまい、深植えすると葉が土に近くなってしまうので病気にかかりやすくなります。根鉢と鉢土が同じ高さになるようにします。
最後に根の活着をよくするために開けた穴に水をいれます。
2.3.3 植え付け後はたっぷり水をあたえて仮支柱を立てる
ポットから根鉢が崩れないように丁寧に外し植え付けます。接木苗の場合は接ぎ木部分に土がかぶらないようにします。
植え付けが終わったらたっぷり水をあたえます。強風で倒れないように仮支柱を立て麻紐等で誘因します。
2.4 ナスの初期生育を助ける作業【プランター】
2.4.1 一番花より下部のわき芽かき
わき芽の管理はナスの生育を最適化するための重要な作業の1つです。わき芽が多すぎると、各枝に栄養が行き渡らず、全体としての生育が悪くなることがあります。
方法
植え付け後、2~3週間でわき芽が出てきます。この時点で、一番花の直下のわき芽1つだけを残し、それより下の部分のわき芽は全て摘み取ります。
3本仕立てにする場合、一番花より下の元気なわき芽をもう1本残します。
注意点
芽かきを行う際は、傷口が直接太陽に当たらないような状況や、乾きやすい天気の日の午前中に行うことがおすすめです。
このようにすることで、傷口の感染リスクを低減し、植物の健康を維持することができます。
2.4.2 ナスの一番果の摘果
生育初期に出る最初の実を「一番果」と言います。これを育てると苗の成長が遅れる恐れがあるため、通常は取り除きます。ただし、苗が元気すぎるときは例外です。
苗の力が弱い場合、二番果も摘果を考えます。この手順は収穫を増やすために大切です。
2.5 ナスのプランター栽培の支柱立て
2.5.1 ナスのあんどん支柱立て
ナスの支柱立ては側枝にそって支柱を立てる方法が管理もしやすくスタンダートですが、プランターで育てる場合はあんどん支柱でたてるのもおすすめです。
あまり横に広げるスペースがないと時に大きさの目安になりますし、見ためもいい感じです。手順と用意する道具について簡単に説明します。
1.あんどん支柱を用意する。
まずは支柱を用意します。ダイムリングと支柱を組み合わせると大きさも調整できて便利です。
大きさの目安は12号プランターですとダイムリングのサイズは37cm 支柱の長さは150cm。10号プランターですとダイムリングのサイズは32cm位がおすすめです。
2.支柱を組み立てる
用意した支柱を組み立てていきます。準備だけきっちりしておけば、特に難しい作業ではありません。
支柱を1本立てた後。ダイムリングを取り付け支柱の位置を決めておくと効率的に作業を行うこうとができます。
2.5.2 2本仕立て
ナスは2本仕立てか3本仕立てで育ててその側枝を管理していく方法もあります。しま農研では、管理がしやすい2本仕立てで育てます。
一番花のすぐ下のわき芽と本枝をの2本育てていくと最終的には写真のようなきれいなV時型の形になります。
支柱は野菜の健康な成長をサポートするためのキーとなるツールです。各野菜に適した支柱の選び方や、その目的、役割についての詳細は、私たちの別の記事で詳しく説明しています。
こちらの記事もチェックして、支柱の知識を深め、あなたのナス栽培にお役立てください。
2.6 ナスの剪定作業【プランター】
2.6.1 ナスの側枝を剪定し長く楽しむ方法【側枝1果どり】
ナスが一度に多くの実をつけると、生育が遅れや真夏に成り疲れる可能性があるため、実の数を制限する剪定方法が重要です。この「側枝1果どり」の方法を取り入れることで、ナスを長く楽しむことができます。※本枝は剪定しないように注意してください。
1.花や実の1枚上の葉を残し剪定する。
ナスに花や実が1つ付いたら、その上の1枚の葉だけを残し、他の部分を剪定します。また、この葉のわき芽も取り除きます。
これにより、枝になる実の数を制限し株の成り疲れを防止することができます。
2.実を収穫後、わき芽を残し切り戻す。
ナスを収穫した後、基部のわき芽を残し、上部を切り戻します。この新しいわき芽から再び実が成ることとなります。
もし2つのわき芽を育てたい場合もあり、その際は適宜調整してください。
2.6.2 内側に伸びた枝は剪定と誘因
プランターでナスを育てる際、葉が密集しやすいのは特徴の一つです。この葉の密集は、影が多くなり日当たりの悪化を招き、結果として「ボケナス」が発生したり、全体の生育が遅れる原因となります。
プランターでの栽培は、地植えに比べて、剪定と誘因の技術が求められます。具体的には、内側へ伸びた枝は適時剪定し、その後残った枝を外側へと誘引します。これにより、日当たりを均等にし、健全な成長をサポートすることができます。
2.6.3 一番花より下の部分のわき芽と葉の取り扱い
ナスの下部には生育の進行とともに新しい葉やわき芽が増えてきます。特に土に近い葉は、湿度や病気の影響を受けやすくなります。
そのため、健全な成長を保つために、一番花よりも下に位置するわき芽や葉は、定期的に除去していくことが推奨されます。
2.8 ナスの収穫【プランター】
2.8.1 ナスの収穫のタイミング
ナスの収穫タイミングは、品種や栽培環境によって適切な時期が異なりますが、一般的には開花から20~30日後が目安とされています。
ナスが適切な大きさに達したら、色の変化や硬さなどをチェックして、ハサミを使用して摘み取ります。特にプランター栽培の場合、成長スペースが制限されるため、市販のものよりもやや小ぶりな果実になることが一般的です。
2.8.2 収穫後の作業とその他テクニック
収穫する際には、前章で説明した切り戻し作業も同時に行うと効率的です。
ナスは生育初期に果実を摘み取ることで、株の成長を促進させるというテクニックもあります。草勢が弱い時などは早めの収穫も試してみてください。
2.9 ナスの水やり【プランター】
2.9.1 暑さを避けた水やりのタイミング
ナスは水を多く必要とする野菜で、特に水切れには敏感です。プランター栽培の場合、土の乾燥が早く、水の補給が特に重要です。
真夏などの高温期には、暑さを避けて朝や夕方に水やりをすることで、根のダメージを最小限に抑えることができます。この時間帯の水やりが、ナスの健やかな成長のためにおすすめです。
2.10 ナスの追肥のポイント【プランター】
ナスは大量の肥料を好む植物で、肥料の不足は収量や生育に影響を及ぼします。特に、プランター栽培の場合、追肥のタイミングや量が非常に重要となります。
適切な追肥のタイミング
ナスの適切な追肥の時期は、定植後約1ヶ月が目安となります。
このタイミングでの追肥は、健康な株の成長と豊かな実の形成を支援します。以降、約2週間毎の追肥が推奨されます。
時期によるものは目安となりますので、ナスを観察しながら適時おこなうのもおすすめです。
肥料不足の兆候
ナスの肥料不足のサインをキャッチすることが大切です。具体的には、雄しべの長さが短くなる、花の付きが悪い、着果せずに花がすぐに落ちる現象が挙げられます。また、葉の色が薄くなる、黄色くなるなどの変化も警戒が必要です。
ただし、黄色く変色する原因は肥料焼けも考えられるため、慎重な観察が求められます。
追肥作業は深く、正しい方法を見つけるためには多くの経験と知識が必要です。追肥に関する学びは、植物の微細な変動や状態を敏感に捉える観察力を身につけるプロセスでもあります。このような観察のスキルが研ぎ澄まされると、植物との日々のやり取りがより豊かで楽しいものに変わってきます。
追肥の詳しい手法や考え方については、こちらの記事でより詳しく解説しています。しま農研としても、このジャンルに関しては現在も研究を続けております。知識を深めたい方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
2.11 ナスの種採り【プランター】
ナスの種を採る際、最も大切なのはその果実が完全に熟しているかどうかを確認することです。通常の収穫時期よりもさらに時間をかけて、種が完全に成熟するまで待ちます。この期間は通常の着果から40日以上は見ておくことがおすすめです。
紫色のナスの場合、茶色く変色してきたときが種採りの適切なタイミングです。一方、白ナスの場合は果実が黄色く変わり始めた時が目安となります。
収穫した完熟ナスは、種と果実を分けます。種はしっかりと乾燥させた後、湿度の低い場所で保存します。この際、密閉容器や紙袋を利用すると良いでしょう。
種採りの具体的なタイミングや詳しい手順については、専用の記事で詳しく解説しています。興味のある方は、そちらの記事を参照して、効率的に種を採る方法を学んでみてください。
3.ナスのプランター栽培記録
3.1 ナスのプランター栽培レポート
しま農研ではナスのプランター栽培の過程を実際に観察し、「栽培レポート」として詳細にまとめています。このレポートには、月ごとの成長記録や日常のケアの様子が含まれています。これにより、あなたの栽培の参考や目安としての活用ができるようにしています。
家庭菜園には多くの疑問や課題が存在します。そのため、しま農研はこれらの疑問や課題に対して実際の検証や考察を行っております。プランターと地植えでの収穫数の比較やプランターの大きさの違いによる比較など失敗した実例を含む多岐にわたるテーマについてレポートしています。
ナスのプランター栽培に関するさらなる疑問や課題がある方は、ぜひこちらのレポートも参考にしてください。
4.まとめ
この記事では、ナスのプランター栽培に関する全てを網羅的に解説しました。具体的には、プランターの選び方、栽培計画、そして実際の栽培作業について触れています。
しま農研でもナスは定番の野菜として毎年育てており、その魅力を実感しています。特に地植えをする場合、連作障害を避けるために様々な野菜をローテーションさせる必要があるため、スペースが足りなくなることがあります。そこで、プランター栽培のスキルは非常に価値があります。
また、しま農研では多様な野菜の栽培方法を紹介しており、それらの記事は50音順で整理しています。どの野菜に興味を持っているかに関わらず、必要な情報を簡単に探すことができます。ぜひとも、これらの情報を参考にしてみてください。
読んでいただきありがとうございました!
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