家庭菜園ではスペースが限られているため、どの野菜を優先して育てるか選ぶのが難しいですよね。ニラはその美味しさと育てやすさで人気がありますが、他の野菜と競合するとなるとなかなかメインでの栽培に踏み切れないこともあるでしょう。
しかし、ニラはコンパニオンプランツとしても非常に優れており、ウリ科やナス科の植物にとって有益です。その根には共生する微生物がおり、土壌病害の原因となる病原菌を減らす効果があります。さらに、その強い香りは害虫を遠ざける効果も期待できます。
この記事では、ニラを他の野菜と混植する際のメリットや効果的な作付け方法、さらに地植えでの育て方について詳しく解説します。春夏の菜園に色どりを加えつつ、収穫したての新鮮なニラを楽しむ方法をご紹介します。家庭菜園でのニラ栽培に挑戦してみませんか?
ニラはちょこっとしたスペースで育てることができるので家庭菜園向きの野菜です。何度も収穫も楽しめるので、しま農研は毎年コンパニオンプランツに採用しています。
1.ニラについて
ニラはヒガンバナ科に属する多年草で、その原産地は東アジアとされています。長い歴史を持ち、なんと3000年以上前から人々に利用されてきました。日本には9世紀頃に伝わったとされ、古事記や万葉集などの古典文学にもその存在が記されています。これは、ニラが日本の食文化において古くから重要な位置を占めていることを示しています。
ニラはその独特の香りと味わいで知られており、料理に深みと香りを加えるために広く利用されています。家庭菜園での栽培は比較的容易であり、手軽に新鮮なニラを楽しむことができるため、多くのガーデナーにとって魅力的な選択肢となっています。
和名/英名 | ニラ/Chinese chive |
原産地 | 東アジア・中国 |
分類 | ヒガンバナ科ネギ属 |
発芽温度 | 15~20℃ |
育成温度 | 20~25℃ |
株間 | 30cm |
畝幅 | 60cm |
土壌酸度 | pH6~6.5 |
収穫まで | 約3ヶ月 |
2.ニラを混植しよう!
家庭菜園でのスペースの有効活用には、様々な野菜の混植が有効なテクニックです。異なる種類の野菜を同じ場所に植えることで、害虫の抑制や土壌の栄養バランスを維持するといった利点があります。これらの相性の良い植物の組み合わせを「コンパニオンプランツ」と呼びます。
コンパニオンプランツについての基本知識はこちらの記事で詳しく解説していますので知識を深めたい方はご参照ください。
2.1 ニラ:コンパニオンプランツとしての優秀さ
2.1.1 ニラを混植する効果
ニラはその根に共生する拮抗菌により、抗生物質の一種を分泌し、病原菌を減少させる効果が期待されます。
また、ニラを切った際に発生する独特の匂いは、ダイコンサルハムシなど害虫を避ける効果があるといわれています。傷んだ葉を捨てずに株元に置いておくことで、自然な害虫忌避剤としての役割も果たします。
2.1.2 ニラと相性のいい野菜
ニラはナス科の野菜(トマト、ナス、ピーマン)やウリ科の野菜(きゅうりなど)との混植に適しています。これらとの組み合わせにより、相乗効果を期待できます。
ただし、エダマメなど一部の野菜とは相性が良くないことがあります。混植の際は、相性の良い野菜を選んで植えることが大切です。
2.2 ニラの混植栽培の作付け例
2.2.1 ニラとナスの混植栽培
ナスとニラの混植栽培について、実際にしま農研で行った栽培の結果をレポート形式で別の記事で紹介しています。この作付けについてはニラだけでなく落花生、バジル、マリーゴールド、ナスタチウムも一緒に植えている作付けになります。
作付け位置やそれに伴う成長の様子、そしてその効果や失敗についての詳細を公開しています。あなたがナスとニラの混植栽培を試みる際には、是非ともこちらの記事を参考にしてみてください。
3.ニラの地植えでの栽培計画と準備
地植えでニラを栽培する場合、計画的に準備を行うことが成功への鍵です。この章では、ニラの栽培計画と準備について具体的に解説します。
3.1 ニラの栽培時期
ニラの栽培には、適切な時期の選定が重要です。特に初心者には、播種から始めるより苗を用いた定植が推奨されます。これは、播種から始めると1年目は収穫を見送る必要があるためです。多くの園芸店でニラの苗が販売されており、これを用いると手間を省くことができます。
混植する場合は、他の野菜と同時期(5月頃)にニラの定植を行うのが良いでしょう。根の近くに植えることで、根に共生する拮抗菌の効果を最大化できます。定植後は、収穫と生育を繰り返していくことになります。
また、ニラは多年草であるため、冬を越すことができれば、翌年も栽培を続けることが可能です。冬越しの準備は12月か1月頃、株が枯れ始めた時に行います。
3.2 ニラの地植えでの植え付けの間隔
単独で栽培する場合: ニラを単独で栽培する際は、株と株の間に約15~20cmの間隔をあけることを推奨します。
混植する場合: 混植を行う際は、ニラを他の野菜の近くに植えることが望ましいです。この方法は、コンパニオンプランツとしての利点を最大限に活用できます。
しかし、ニラが他の野菜によって完全な日陰にならないように注意することが重要です。ニラと他の野菜の成長した大きさと太陽の位置を考慮して、最適な植え付け位置を決めましょう。
3.3 ニラの地植え栽培の土作り
土作りは栽培成功の基盤を築くために、ニラを含む多くの野菜にとって必要不可欠なステップです。特に晩冬、春からはじめる土づくりは期間をかけてじっくりとおこなうことがおすすめです。遅くとも定植予定日の1ヶ月前には準備にとりかかりましょう。
土作りは、雑草の除去から始め、土壌改良、酸度調整、元肥の施用といったステップに分けておこないます。土づくりの手順については別の記事に詳しくまとめています。土づくりのさいはぜひこちらの記事を参考にしてください。
3.4 ニラは苗から買うのがおすすめ
ニラをはじめての栽培には、苗から始める方法が特に初心者におすすめです。ニラは多年草で、1年目は収穫を控えて株を育てることに焦点を当てるのが一般的です。このため、種からの栽培はやや手間がかかり、初心者には難易度が高いかもしれません。
ニラの苗は多くの園芸店やホームセンターで手軽に購入できます。品種選びに迷った場合や、他の野菜との組み合わせを考えている方は、以下に苗や種の購入方法について詳しくまとめた情報がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
4.ニラの地植えでの栽培方法
4.1 ニラの定植
ニラの定植には2つのポイントがあります。水のあたえ方と植え付けの場所です。この2点ついて詳しく解説していきます。
ポイント1 水のあたえ方
ニラを定植する際には、水やりが非常に重要です。根の健康的な活着を促進し、苗の成長を支えるために、以下の手順で水やりを行います。
この手順でニラの苗は地植えの環境にしっかりと適応し、健康的な成長を遂げることができます。
定植後は、特に初期段階での適切な水やりが、ニラの成長にとって非常に重要になります。
1.ポットへの水やり
定植作業の1~2時間前にポットのエダマメに水をたっぷりと与えます。これにより、土が湿って、根が移植時のショックを最小限に抑えられるようになります。
2.植え穴への水やり
植え穴を掘ったら、その穴にも水をあたえます。このステップは、土に十分な水分を確保し、苗が新しい環境に適応しやすくするために重要です。
3.定植後の水やり
覆土をした後、再度たっぷりと水を与えます。この水やりにより、土と根が密接に接触し、根の活着を促進します。
ポイント2 植え付ける場所
混植を行う際は、ニラを他の野菜の近くに植えることが望ましいです。一緒に植える野菜の根の特性をしておくとよりよいでしょう。
例えばナスの根圏は広範囲に及び梅雨の間は浅く広く、梅雨明けには深く潜ります。植え付ける場所はナスのガードの甘い株元がおすすめです。植え付ける時期も最初からナスの懐に入ることで根を絡ませあって定植するとニラの消毒効果を期待できます。
4.2 ニラの収穫方法と周期
ニラは、再生力が高く、一度収穫しても何度も成長し、繰り返し収穫できるのが大きな魅力です。
収穫時は根を引き抜くのではなく株元を残してハサミ等で刈り取ります。ニラはその後も元気に再生し、新しい若い葉が伸びてきます。この作業を繰り返し収穫します。収穫の適切なタイミングは約20~30cm位です。
環境にもよりますが、しま農研の経験上は1ヶ月に1回位は収穫できます。若い葉のうちに収穫することで、より美味しいニラを楽しむことが可能です。
4.3 ニラの花摘み
ニラは夏を過ぎてくると花を咲かせることがあります。しかし、ニラが花を咲かせると、葉の質が変化し、食べるには硬くなり風味も落ちてしまう傾向があります。
そのため花が咲き始めたらできるだけ早めに摘み取ることが重要です。これにより、植物が葉に栄養を集中させることができ、柔らかく風味豊かな葉を維持することが可能になります。
一方で、ニラの花は小さくかわいらしく、観賞価値もあります。したがって、食用としての収穫が一段落した後や、菜園の景観を楽しむ目的で、花を残しておくことも一つの選択です。
4.4 ニラの水やり
ニラを地植えで育てる場合は水やりはほぼ必要はありません。自然にある雨などで十分成長することが可能です。
ただし、定植直後の1週間程度は根の活着を促進するために水やりが重要です。また、雨が降らず土が極端に乾燥した状態の場合も、水を与えることが推奨されます。また真夏等の暑い日には、夕方や朝などの涼しい時間にあたえるのがよいでしょう。
4.5 ニラの追肥
4.5.1 ニラの追肥のタイミング
混植で育てている場合、他の野菜に追肥をしていればニラを単体で追肥をする必要はあまり発生しません。単独で育てている場合は刈り取った後に少量の追肥してあげることが一般的です。ただし、肥料が多すぎると虫がつきやすくなったりトラブルも多く発生するため注意が必要です。
4.5.2 追肥作業の向上
追肥は植物との対話とも言える作業で、正しい方法を見つけるためには経験と観察が必要です。植物の細かな変化に注意を払い、追肥の技術を磨くことで、野菜とのやり取りがより楽しく、生産的なものになります。
追肥に関するさらに詳しい手法や考え方については、しま農研の別の記事で詳しく解説しています。現在も追肥に関する研究を続けているため、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
4.6 ニラの冬越し作業
ニラは多年草で、適切な冬越し作業を行えば、翌年も健康に成長し、再び収穫を楽しむことができます。この方法をおこなえば苗を買わずとも毎年ニラを収穫することができるのでチャレンジすることがおすすめです。この章では、ニラの冬越し作業について詳しく解説していきます。
4.6.1 ニラの株分け
1.葉の刈り取り
冬が近づき、ニラが枯れ始めたら、株元から2~3cmを残して全ての葉を刈り取ります。
これにより、株が冬の寒さに耐えるエネルギーを蓄えるのに役立ちます。
2.株の掘り出し
ニラをスコップなどをつかい掘り起こします。
ニラの根は広範囲に広がっていることが多いため、株を掘り出す際は根を損傷させないよう、広範囲に掘ります。
3.株分け
ニラの株を3~4本ずつに分けます。
これにより、株が密集しすぎるのを防ぎ、健全な成長を促します。
4.移植場所の準備し定植
新たに株分けしたニラを定植します。株間は約20cm程度空けて、充分な成長スペースを確保します。
移植場所は良質な土を用意し、適切な土壌作りをしておきます。しま農研はプランターに移植して春になったらコンパニオンプランツとして地植えに再び移植するようにしています。
ニラはプランターでも十分育てることができるのでこのまま育てるのもおすすめです。
5.防寒と寒肥の施用
冬の寒さからニラを保護するために、不織布などの防寒材を用いて保温します。
冬越し後の生育を支えるために、寒肥を施します。肥料は株元から10~15cmの場所に置き、春に向けて栄養を蓄えさせます。
5.まとめ
この記事では、ニラの地植え栽培における重要なポイントや混植する際のメリット、作付け方法について紹介しました。
ニラは手間が少なく、比較的簡単に育てることができ、収穫の楽しさも感じられる野菜です。しま農研がニラを育てようと思ったきっかけは、先輩の菜園に自生しているニラの力強さに興味を持ったことから始まりました。また、ニラはコンパニオンプランツとしても優秀で、ナスやきゅうりなどと一緒に育てることができるのも魅力の一つです。新鮮なニラを食卓に加えることで、料理の味わいを深め、菜園の多様性も高まります。
しま農研では、ニラ以外にも多くの野菜の栽培方法に関する情報を提供しています。これらの情報は50音順で整理されており、どの野菜を栽培したいかにかかわらず、必要な情報を簡単に見つけることができます。家庭菜園に興味がある方は、これらの情報を活用して、より豊かな菜園作りを楽しんでください。ニラ栽培の楽しさとその効果を最大限に活かして、充実した菜園ライフをお楽しみください。
読んでいただきありがとうございました!
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