夏野菜でも人気の高いピーマンやパプリカは、比較的病害虫にも強く、初期生育さえうまくいけば、多収も期待できる育てやすい野菜です。しま農研では、ピーマンとパプリカ、ぼたんこしょうの栽培において、3つの品種での地植え栽培にチャレンジしました。
ピーマンはうまくいけば、秋から冬にかけても収穫を楽しむことができます。この記事では、2023年に育てた栽培月ごとのピーマンの成長レポートに加えて、その月での作業をまとめています。また、栽培しながらしま農研での経験や実験の結果を共有します。これからピーマンやパプリカを育てる方の参考になれば幸いです。
ピーマンとパプリカは地植えで育てると驚くほど大きく育ちました!このレポートがピーマンを栽培する時のお役になれば幸いです。
1.ピーマンの地植え栽培データ
2023年、しま農研ではピーマンの地植え栽培に挑戦しました。今回は、しま農研が実際に行った栽培の結果を、定植時期や撤去日、栽培日数、収穫量などの具体的なデータとともに一覧表にまとめました。
今年はピーマンとパプリカ、そして信州で古くから親しまれているトウガラシの一種、ぼたんこしょうを育てました。栽培期間は約250日間となり、この長い期間を通じて、結果として3株から合計242個の収穫を得ることができました。栽培時期を逃してしまった分、若干収穫量が少なくなったものの、しま農研としては十分な野菜を育てることができました。
野菜 | 品種 | 株数 | 定植 播種 | 初収穫 | 終了日 | 収穫 量 | 栽培 日数 |
ピーマン | 京波 | 1株 | 5/3 | 8/1 | 1/7 | 89個 | 249日 |
パプリカ | 豊作オレンジ | 1株 | 5/2 | 8/26 | 1/7 | 72個 | 250日 |
ぼたんこしょう | – | 1株 | 5/2 | 7/18 | 1/7 | 81個 | 250日 |
2.2023年ピーマン(京波)の地植え栽培カレンダー
2023年、しま農研でのピーマン栽培過程を詳しく追跡しました。このセクションでは、月ごとにピーマンの成長や関連活動のハイライトを提示し、土作りの初期段階から収穫までの詳細を共有しています。
このカレンダーにより、ピーマンの成長過程を具体的に理解できるようになります。特に、初めて栽培にチャレンジする方々にとって、この情報は実際の作業フローやタイミングを把握する参考資料にご活用ください。
4月のピーマン栽培:土作り
4月の始めに土作りを開始しました。使用したレイズドベッドは1.6平方メートルの大きさで、腐葉土3.2kgと牛ふん3kgを施肥として加えました。この時期には、コガネムシが大量に発生し、一匹ずつ手で捕殺する作業が必要になりました。最初はこの作業に抵抗を感じましたが、徐々に慣れていきました。
さらに、つるなしインゲンやナスタチウムとの混植栽培を計画しており、事前にそれらの配置を決めて栽培を開始しました。このアプローチは、土壌の健康を保ちながら、害虫のリスクを低減するのに役立つと考えられています。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
4月 | 90mm | 16.3℃ | 26.8℃ | 6.6℃ | 197.2h |
5月のピーマン栽培:定植と摘果
5月はピーマンの定植作業が行われました。この時期に植えられた小さな苗は、最終的にかなりの大きさに成長することが期待されます。
5月20日には生育を安定させるために一番果の摘果を行いました。この初期段階での摘果は、苗が安定した成長を遂げる上で重要なステップです。現時点で、苗は安定した生長を見せており、順調に成長している様子が観察されます。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
5月 | 159mm | 19.0℃ | 32.2℃ | 10.1℃ | 195.9h |
6月のピーマン栽培:定植と摘果
6月に入ると、ピーマンの苗が少しずつ成長を見せ始めました。この段階で、本支柱を立て、植物の成長を支える作業を行いました。特に、一番果から分かれた2本の枝と、あらかじめ伸ばしておいたわき芽を利用し、3本仕立てでの栽培を選択しました。
6月の後半には、他の野菜と比較してピーマンの生長が少し遅いと感じました。そのため、実が大きくなる前に摘果を行い、植物の生長を見守ることにしました。この時期、ナスタチウムが旺盛に生長していたため、その影響でピーマンの成長が少し阻害されていた可能性があります。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
6月 | 347mm | 23.2.℃ | 33.8℃ | 15.3℃ | 137.5h |
7月のピーマン栽培:成長期
7月に入ると、ピーマンの生長が顕著に加速しました。この生長速度の向上は、気温の上昇によるものか、またはナスタチウムの撤去による影響か、その要因は明確ではありません。しかし、7月中旬にはピーマンの実が徐々に大きくなり始めました。
今年の夏は特に暑く、土の乾燥が進む速度も速かったため、毎日の水やりを徹底しました。また、ナスタチウムやつるなしインゲンの葉や茎をマルチとして利用することで、土壌の水分保持を図りました。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
7月 | 30mm | 28.9℃ | 37.7℃ | 20.7℃ | 250.4h |
8月のピーマン栽培:初収穫
8月になると、ピーマンが徐々に収穫できる状態になりました。この時期、ピーマンは安定した生長を見せ、実も順調に成熟し始めました。
夏の間、特に暑い日が続いたため、水やりと追肥には特に注意を払いました。しかし、それ以外には特別な手間は必要とされませんでした。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
8月 | 132.5mm | 29.2℃ | 36.7℃ | 22.2℃ | 222.3h |
9月のピーマン栽培:支柱の重要性と虫被害
9月に入ると、ピーマン栽培において2つの主要な問題に直面しました。まず、台風により支柱で固定していなかった枝が折れるトラブルが発生しました。この経験から、大きく育ったピーマンの支えとして、3本仕立てだけでは不十分であり、支柱の増設が必要であることを痛感しました。
もう1つの問題は、この時期に急増したタバコガによる被害でした。穴が開いたピーマンは、残念ながら撤去する決断をしました。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
9月 | 229.0mm | 26.7℃ | 34.9℃ | 18.5℃ | 143.7h |
10月のピーマン栽培:収穫最盛期
夏を通じて多くの収穫を期待していたピーマンですが、その最盛期は10月に到来しました。この月には、想像以上の収穫量を達成し、食べきれないほどのピーマンを収穫することができました。
ピーマンは木のように大きく成長し、豊富な実をつけました。枝は最終的に7本の支柱で支えられており、これが植物の安定性を保つのに大きく寄与しました。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
10月 | 147.0mm | 18.9℃ | 29.9℃ | 11.4℃ | 200.6h |
11月のピーマンの栽培:完熟ピーマンの収穫
収穫量が安定してきたことから、一部のピーマンを完熟させるチャレンジを行いました。未熟な実を敢えて収穫せず、赤く完熟するのを待つことにしました。
完熟したピーマンは、未熟なピーマンと比較して肉厚で、甘みが強いのが特徴です。この食べ比べができるのは、家庭菜園ならではの楽しみの一つであり、栽培の喜びを一層深めることができました。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
11月 | 41.5mm | 14.4℃ | 27.5℃ | 5.3℃ | 174.8h |
12月のピーマン栽培:最後の収穫と撤去
今年の暖冬の影響で、12月初旬までピーマンは元気に育っていました。しかし、12月下旬になると、寒さが厳しくなり、ピーマンも徐々に枯れ始めました。そのため、ピーマンの撤去を行うことにしました。
撤去時には、葉を刈り取り、枝だけを残しました。木のように大きく成長したピーマンを見て、今年の栽培が成功したことを実感できた瞬間でした。
月 | 降水量 | 平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 日照時間 |
12月 | 19.5mm | 9.4℃ | 21.1℃ | 0.9℃ | 199.1h |
3.しま農研の感じた経験と検証記録
ピーマン栽培を通じて、しま農研は多岐にわたる経験と学びを得ました。今回、特に印象深かった出来事や検証結果を皆さまと共有したいと思います。
ただし、ここで紹介する経験はしま農研独自の見解や環境に基づいたものであり、一般的な結論を導くものではありません。したがって、参考程度にご覧いただければ幸いです。
3.1 ぼたんこしょうの栽培検証
ぼたんこしょうの栽培は、育て方や生長がピーマンに似ているものの、形状や風味の面で大きな特徴を持つことから、非常にユニークな経験を提供しました。
信州の伝統野菜であるぼたんこしょうは、ピーマンとは異なりトウガラシの仲間です。原産地の涼しい気候を考慮して、関東地方での栽培には若干の難しさが予想されましたが、結果としてはピーマンと同様の収穫量を得ることができました。ぼたんこしょうの辛味は料理の選択を限定しますが、その独特の風味は、お裾分けした野菜の中でも特に人気が高かったです。
しま農研では、苗をオザキフラワーパークで購入しました。市場であまり見かけないため、出会った際にはぜひ栽培を検討してみることをおすすめします。
3.2 豊作パプリカオレンジの栽培検証
今年、しま農研では豊作パプリカオレンジという品種を栽培しました。この品種はサントリーの本気野菜シリーズに属し、そのユニークなコンセプトで知られるシリーズから、毎シーズン少なくとも1苗を購入しています。このブランドはしま農研のお気に入りの一つです。
「豊作」という名前の通り、この品種は実付きが非常に良好で、1つの枝に多くの実をつけ、豊富な収穫を楽しむことができました。しかし、栽培過程で2点の課題が浮き彫りになりました。まず、多数の実がつくことで通常のピーマンよりも重くなり、支柱での補強が不足していたため、枝が折れてしまう事態が発生しました。また、生長が予想よりも遅れ、全ての実が完熟する前に冬を迎えてしまったことも課題となりました。
これからこの品種を栽培する際には、これらの点に注意を払うことで、より良い栽培結果が得られるでしょう。未熟な状態でも十分に美味しく食べられることが今回の栽培で実証されました。
3.3 害虫被害の検証
ピーマン、パプリカ、ぼたんこしょうは、9月と10月に直径約5mmの穴が開いた実を多数確認しました。これらの穴は、タバコガの幼虫による侵入が原因である可能性が高く、被害を拡大させないためには、被害を受けた実を撤去する以外に対処法がありませんでした。
予防措置として、薬剤の散布が考えられます。また、肥料過多によって虫が引き寄せられる性質もあるため、適切な追肥管理が必要です。ナス科の植物に一般的に見られるこの種の被害は、あらかじめ考慮しておくべきかもしれません。さらに、タバコガの成虫は赤色を好み、黄色を嫌うため、マリーゴールドのような植物を植えることも効果的な防虫策の一つとされています。
3.4 強風対策の検証
9月に台風シーズンが到来すると、強風による影響が特にピーマンなどの実をつける植物に見られます。これらの植物は実の重みで枝に負担がかかりやすく、支柱で適切に支えることが非常に重要です。しかし、しま農研ではこの重要な作業を怠った結果、いくつかの枝が折れてしまい、収穫量が減少してしまいました。
地植えの場合、通常は3本仕立てが推奨されますが、スペースを広く取って栽培する際には、それだけでは不十分です。結果として、最終的には7本程度の支柱で仕立てることになりました。また、誘引作業の重要性が再確認されました。特に実が多くついた枝では、誘引の間隔を短めに設定することで、重さを効果的に分散させることが可能です。
3.5 家庭菜園するなら完熟ピーマンもおすすめ
家庭菜園でのピーマン栽培において、後期には完熟ピーマンを楽しむことを特におすすめします。ピーマンは1株から豊富な収穫が期待できるため、一部の実を完熟させることで、苗にかかる負担を気にすることなく、異なる味わいを楽しむことが可能です。
完熟ピーマンは市場にあまり出回らないため、その独特の甘みを家庭で味わうことは、ユニークな経験となります。少しの甘みを含む完熟ピーマンは、苦味が苦手な子供たちも喜んで食べることがあります。さらに、栄養価が未熟な実よりも高いという点も、完熟ピーマン栽培をおすすめする理由の一つです。
4.ピーマン・パプリカの地植えでの育て方
前章で、しま農研によるピーマン・パプリカの地植え栽培について、詳細なレポートを紹介しました。実際には、ピーマン・パプリカは地植え栽培を行うことで、豊富な収穫を期待できる野菜の一つです。
しま農研では、ピーマン・パプリカを地植えで育てる際の具体的な手順やポイントを、別の記事でまとめています。この記事では、定植から始めて、収穫までのプロセス、さらには植物のケアにおける重要な注意点について、詳しく説明しています。
これからピーマンやパプリカを地植えで栽培しようと考えている方は、この記事を是非参考にしてください。
5.まとめ
ピーマン・パプリカの地植え栽培は、実践を通じて多くの経験と学びを提供する、非常に魅力的な活動です。地植えによる栽培は、これらの野菜の豊富な収穫を可能にし、家庭菜園の楽しみを大いに広げます。
この記事を通じて、しま農研でのピーマン・パプリカの地植え栽培経験、月ごとの栽培記録、そして特に印象深かった点を共有しました。これらの実践的な知識が、ピーマンやパプリカの栽培を検討している方々にとって有益な情報源となることを願っています。
しま農研では、ピーマン・パプリカだけではなく、さまざまな野菜やハーブに関する栽培レポートも提供しています。これらの情報を活用することで、あなたの家庭菜園がさらに充実し、栽培の楽しさが倍増することを願っています。
読んでいただきありがとうございました!
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