家庭菜園はスペースに限りがあります。効率よく様々な野菜が少しづつ収穫できた方が嬉しいですよね。そんな時に効果的なテクニックの1つがコンパニオンプランツを利用した混植栽培です。しま農研は毎年レイズドベッドを活用して、色々な作付け方法を試しています。
この記事では、夏野菜でも大人気なきゅうりを中心にエダマメ、パセリ、パクチー、チャイブ、マリーゴールド、九条ネギの混植栽培をレポート形式にまとめました。失敗したデータも公開します。今後混植栽培を計画している人はぜひ参考にしてください。
きゅうりだけでなく相性のいい野菜を組み合わせて色んな野菜が楽しめます。実際の様子を紹介しながら、きゅうりを中心にした混植栽培をご紹介します。
1.きゅうりの混植栽培データ
2023年、しま農研ではきゅうりを中心にした混植栽培に挑戦しました。今回、しま農研が実際に行った栽培の結果を、定植時期や撤去日、栽培日数、収穫量などの具体的なデータとともに一覧表にまとめております。
今年のきゅうりの栽培期間は約3ヶ月半。結果として2株から83本のきゅうりを収穫することができました。更に収穫の可能性は感じられましたが、次の季節の野菜の準備を進めるため、早めに収穫を終える判断をしました。特に注目したのは、「きゅうりの葉を活用した半日陰栽培」ですが、こちらに関しては、完全な成功とは言えず、工夫が必要と感じた部分もありました。詳細については、後の章で解説いたします。
野菜 | 株数 | 定植 播種 | 初収穫 | 終了日 | 収穫 量 | 栽培 日数 |
きゅうり | 2株 | 5/2 | 6/17 | 8/15 | 83本 | 105日 |
エダマメ | 7株 | 4/9 | 7/8 | 7/23 | 随時 | 105日 |
パセリ | 2株 | 5/2 | 5/27 | 8/15 | 随時 | 105日 |
パクチー | 2株 | 5/3 | 6/15 | 8/15 | 随時 | 104日 |
マリーゴールド | 2株 | 4/9 | – | 8/15 | – | 128日 |
チャイブ | 1株 | 5/6 | – | 7/8 | – | 63日 |
ハツカダイコン | – | 5/6 | 6/4 | 6/4 | 3個 | 29日 |
九条ネギ | 2本 | 5/2 | 5/20 | 6/22 | 随時 | 51日 |
2.きゅうりとコンパニオンプランツの作付け例
混植栽培におけるコンパニオンプランツの採用は、野菜同士の相性や配置を考慮して行うことが重要です。この章では、しま農研で今年実際に試みたきゅうりの混植栽培の作付け例を紹介いたします。これをベースに各種検証も進めています。
きゅうりの混植栽培に興味を持っている方々へ。しま農研の作付け例と、後述する検証結果を参考に、ご自身の菜園の環境や条件に合わせた最適な配置に役立てていただければ幸いです。特筆すべき点として、半日陰を好む野菜、例えばパクチーやパセリの配置には注意が必要です。実際、今年しま農研は影が強すぎる場所での栽培がうまくいかないという結果となりました。
3.きゅうりを中心にしたコンパニオンプランツ混植栽培:しま農研の感じた経験と検証記録
2023年のきゅうりを中心にした混植栽培において、しま農研での様々な経験と学びを得ることができました。この節では、特に印象に残った出来事や、行った検証の結果について共有させていただきます。
ただし、以下に述べる経験や検証結果は、しま農研の特定の環境と条件下でのものであるため、他の環境や条件での結果とは異なる可能性があります。そのため、一般的な結論として受け取らず、あくまで参考の一つとしてご覧ください。
3.1 きゅうりの葉を利用した半日陰栽培の検証
今年、しま農研では、きゅうりの葉を利用して半日陰の環境を作り出し、それを活かした他の野菜の栽培を試みました。今回選定したのは、パクチー、イタリアンパセリ、カールパセリ、チャイブの4種類の野菜。
その実践結果は、半分が成功し、残念ながら半分は失敗という結果となりました。失敗の主な要因として挙げられるのは、野菜の配置の問題です。特に、きゅうりの葉が生い茂りすぎてしまったことと、太陽の向きによる影をつくる想像が足りておらず思っていたよりも日光を遮る結果となりました。つまり、半日陰の環境を目指す場合、日の進行方向やきゅうりの葉の成長パターンをより詳細に考慮する必要があると感じました。
以下、実際の写真を交えて、各野菜の成長状況や課題点について詳しくご紹介いたします。
3.1.1 きゅうりの成長の様子
半日陰栽培を成功させるためには、きゅうりの成長の進行を予測することが極めて重要です。それぞれの成長段階におけるきゅうりの様子を写真で記録しました。
定植から1ヶ月後、きゅうりの姿はまだ小さく、愛らしいものでした。しかしその後、急速につるが伸び、わずか2週間後には1m60cmの支柱の頂点に達しました。この成果を受けて、先端部分を摘心しました。摘心後、つるは主に横方向へと広がりを見せ、計画していた半日陰よりも深い日陰を形成してしまいました。きゅうりの詳しい成長の様子は別の記事でレポートしてますのでよろしければご参照ください。
3.1.2 きゅうり×パクチーのコンパニオンプランツ栽培結果
パクチーの栽培では、収穫を随時実施することができ、種取りまでのプロセスまで成功しました。成功の大きな要因として、きゅうりの葉の影響を受ける部分がちょうどよく、うまく半日陰の状態が形成されたことが挙げられます。
さらに、パクチーの栽培方法として、直播と苗からの定植の2つの方法を試みました。このうち、直播での栽培がより良い生育を示す結果となりました。
3.1.3 きゅうり×イタリアンパセリのコンパニオンプランツ栽培結果
イタリアンパセリの栽培は初期段階で特に順調でした。日陰部分が少なかったことも一因と考えられ、実際、収穫したパセリの量が想定を上回り、消費が追いつかないほどの生育を見せていました。
きゅうりの生育が進むと、イタリアンパセリの生育スピードは少し落ちました。しかし、きゅうりの収穫が終わるまで、強い日差しにも耐えつつ健康に育ちました。全体として、このコンパニオンプランツ栽培は成功したと評価できるでしょう。
3.1.4 きゅうり×カールパセリのコンパニオンプランツ栽培結果
カールパセリの栽培は、きゅうりの生い茂る葉の影によって難しさが増しました。特に、きゅうりの生育が進むにつれて影の時間が増加し、早い段階でカールパセリが日光を不足させられる状態となりました。
徐々に生育が停滞し、7月後半には新しい葉を出すことができなくなりました。この結果、カールパセリの栽培は中止となりました。
3.1.5 きゅうり×チャイブのコンパニオンプランツ栽培結果
チャイブの栽培は、配置のミスにより難航しました。定植時にきゅうりに近すぎる場所に植えてしまったため、初期からチャイブは日陰の中で成長を止め、最終的には枯れてしまいました。
日の進行や日差しの方向をよく考慮し、配置を工夫すれば、日当たりの良い環境も実現できたかもしれません。失敗は悔やまれますが、これを貴重な経験として次回に活かしていくつもりです。
3.2 コンパニオンプランツを利用した害虫忌避効果検証
害虫忌避効果の有無について、環境の違いなどの要因が存在するため断定的な評価は難しいのですが、今回しま農研の実験では、きゅうりの栽培に際して特に虫害の問題は確認されず、無農薬での栽培が可能でした。
コンパニオンプランツによる害虫忌避効果については、以下の野菜に特定の効果が認められていると言われています。詳しくは次の一覧表をご覧ください。
野菜 | 主な害虫忌避効果 |
パクチー | アブラムシ、ハダニ、コナガ |
パセリ | テントウムシダマシ、アブラムシ |
マリーゴールド | 土中のセンチュウ、アブラムシ、コナジラミ、蚊 |
ハツカダイコン | ウリハムシ |
チャイブ | カメムシ、コガネムシ、ウリハムシ |
今回の栽培において、きゅうりの主要な害虫であるウリハムシの飛来は確認されましたが、大量には発生せず、害虫としての影響は軽微でした。しかし、コンパニオンプランツの害虫忌避効果については、絶対的なものではないと考えた方がよいと、しま農研では考えています。
3.3 きゅうり×エダマメのコンパニオンプランツ効果
エダマメは豆科の植物で、その根に共生する根粒菌により、空気中の窒素を土に固定する働きがあり、土壌の肥沃化が期待されます。この特性は、きゅうりの成長をサポートする要因となり得ます。また、エダマメは新鮮な状態での収穫が格別で、きゅうりと同時期に栽培できるので、二つの野菜を並行して育てることが人気の理由の一つとなっています。
具体的なこの組み合わせによる効果の検証は難しいのですが、しま農研での結果は非常に良好でした。きゅうりは衰えることなく8月中旬まで順調に成長を続けました。エダマメ栽培の詳細については、別の記事で詳しく解説しております。
3.4 きゅうり×ネギ、チャイブのコンパニオンプランツ栽培結果
きゅうりとネギは古来から良い相性を持つ組み合わせとして知られています。ネギ科の植物の根には拮抗菌が共生し、この菌が抗生物質を放出し、土壌中の病原菌を抑制します。特に、きゅうりでよく見られる「つる割れ病」の発生を減少させる効果が期待されます。
チャイブにも同じような効果が期待されるため、しま農研ではこの年、九条ネギとともにチャイブの栽培を選択しました。この結果、きゅうりは「つる割れ病」の影響を受けずに順調に成長しました。また、ネギとエダマメが相性が良くないとの情報もあるため、チャイブがよくしま農研では採用していますが今年の栽培にはそれほど影響はありませんでした。
コンパニオンプランツとしての効果を最大化するためには、根が互いに絡む距離での植栽が推奨されます。しかし、今年のような失敗を避けるため、十分な日光が当たる配置を考慮することが重要です。
4.それぞれの野菜の育て方
前章では、2023年にしま農研が実際に育てたきゅうりを中心にした混植栽培をレポート形式でご紹介しました。コンパニオンプランツを採用には効果の期待もありますが、様々な野菜を少しずつ収穫できるというのも魅力で家庭菜園向きの栽培方法です。
今回紹介した野菜のなかで育ててみようと思った野菜はありましたでしょうか?しま農研は様々な野菜の育て方に関する記事を作成しています。それぞれの野菜についての具体的な手順やポイントなどを具体的に解説しています。
この記事では、様々な野菜の育て方について50音順にまとめています。お目当ての野菜にアクセスして、ぜひきゅうりを中心にした混植栽培を楽しんでください。
5.コンパニオンプランツの基礎知識
最後に、コンパニオンプランツの全体的な知識や基礎部分に関する記事を紹介します。コンパニオンプランツの源流は、先人たちの経験に基づいて生み出された組み合わせが多く存在しています。
その中で、科学的な実証が行われているものもあれば、多くが未だに解明されていない部分もあり、ロマンを感じる栽培方法だと思います。そんな先人たちをリスペクトして、新しい組み合わせを探求するのも面白いですよね。しま農研も日々試行錯誤しながら、そうしたことを想像しています。
基礎知識を深めることで、新しい挑戦に繋げることができます。コンパニオンプランツに興味を持った方は、是非こちらの記事も参照してみてください。
6.まとめ
しま農研の実践を通じて、きゅうりを中心にした混植栽培の多様な可能性を探る旅に皆様をお連れしました。コンパニオンプランツの利用は、一見すると単に異なる植物の組み合わせと思われがちですが、実際にはその背後には長い歴史、伝統、そして科学的な探求が存在します。
混植栽培の方法は、単に害虫を遠ざけるためだけでなく、土壌の肥沃性を向上させる効果や、互いの成長を促進する役割など、多くの利点が挙げられます。家庭菜園での栽培を考える際、このような方法を取り入れることで、より豊かで健康的な野菜を育てることができると思います。
この記事を通じて、コンパニオンプランツの魅力や効果について少しでも興味を持っていただけたら幸いです。そして、新しい組み合わせや発見を自身の菜園で試してみることで、より楽しい菜園ライフを送れることを願っています。
また、しま農研の様々な取り組みをレポート形式にまとめています。2023年にまとめたレポートについてはこちらの記事にまとめていますのでよろしければ参考にしてください。農は学びと挑戦の連続です。これからもしま農研とともに、新しい発見や知識を共有していきたいと思います。皆様の菜園が、色とりどりの野菜で溢れることを心から祈っております。
読んでいただきありがとうございました!
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